妖精さんの独り言 5−5

月と農業


 最新の研究では、「収穫後の野菜にも生体リズム(概日リズム)が存在する」ということが明らかにされていて、収穫後も害虫を忌避する成分の周期的な変化が観察されているそうです。そういう意味では、植物もまた、様々な生体リズムを持っているのは確かだと言えますが、現代科学が明らかにしているような、日長に反応して栄養生長から生殖成長に移行して、開花したり結実したりするという事実だけでなく、月齢との関連で様々な変化が周期的に現れるということも、農業の現場では指摘されています。まあ、月齢との関連で見る場合と、潮汐との関連で見る場合があるのですが、月齢と潮汐は深く結びついているので、同じものとして見てもよいでしょう。


 月齢と農業の関係に関する、おそらく本邦初の本、『月と農業 〜中南米農民の有機農法と暮らしの技術』(ハイロ・レストレポ・リベラ著 農文協)では、月齢が植物の樹液の流れに影響を及ぼしており、満潮時には植物の生長が早くなり、干潮時には生長が緩やかになるとも指摘しています。また、月光が種子の発芽に影響するほか、新月から満月に向かう時期には光合成が盛んになり、満月から三日間の間にピークがやってくるとも述べられています。


 以下、「2.1年生作物栽培に与える月齢の影響」の項から、野菜に関する記述を引用してみましょう。


「●地上部を収穫する野菜の播種と移植
 過去からの言い伝えでは、播種するのは月が膨らんでいくとき(新月から3日目〜満月の3日前までの、水分が地上部へ拡散する時期)がよいとされる。とくに満月の2〜3日前までに播種を完了するのがよりよいとしている。こうすることで、トマト、ナス、オオムギエンバク、コメ、コムギ、トウガラシ、トマトの木・ルロ(トマトに似た果実)、飼料用トウモロコシ、ピーマン、キュウリ、グリンピース、長ネギ、マメ、インゲン、ソラマメ、ポロネギ、白菜などの野菜類が大きく育ち、実を多く結ぶとされる。

 また十八夜(満月後3日〜新月の最初の3日間、水分の下部への拡散時)には地下に育つ野菜、ニンジン、ダイコン、ジャガイモ、ビート、タマネギ、ニンニク、セロリ、ハツカダイコンなどを播種するとよい。


重要な観察:
 留意したいのは、地上部でも地表面に育つレタス、フダンソウ、ホウレンソウ、リトルコーン、キャベツなど葉を食用にする野菜の場合は、二十六夜で播種したほうがよいことである。三日月で播種すると花が早く咲いてしまう傾向がある。とくにレタスでは顕著で、植物が歪んでしまうと主張する農民もいる。

 このように果菜であれ、子実野菜であれ、満月の3日前に播種するという規範は間違いなく世界的なものといえよう。その根底には、日光よりも弱いが地中の奥深くまで浸透する月の光の働きがある。種子や苗木が生育の初期の段階に月光の放射を受けると発芽が早まり、葉と花の著しい生長が見られる。その月光に一番長くさらされるには、三日月のときに播種すると可能になる。それとは逆に、下弦の月のときに播種し、約15日間、月光がほとんどゼロの状態で育つと、根の発育が助長され、開花と結実の遅延が見られる。」(p.63)


 月齢と播種適期の関連については、日本でも伝承があるようで、例えば、「コマツナは二十六夜に播種するのがよい」と言われていて、これは中南米における伝承と一致しています。基本的には、地上部を食べる野菜は満月前の若潮長潮の日に播種し、地下部を食べる野菜は新月前の小潮から中潮に移行する日に播種する・・・というのがセオリーのようです。


 続いて、『農業と月』から、収穫時期についての記述を引用してみましょう。


「●果菜、子実野菜、マメ類と穀類を生食用に収穫
 果菜、子実野菜、マメ類と穀類を生食用に収穫する場合、以下のように二つに分けて考えることができる。


A−収穫の集中期間
 上弦の3日後から満月の3日後までの間の7日間(この時期に地上部へ水分が集中)。この期間は、果菜の実、野菜、マメ類、穀類の生食用、柔らかいトウモロコシなどがもっともジューシーになると同時に、食味ももっともよくなる。


B−収穫の拡散期間
 だいたい14日間で、前述の期間も含めて、新月後の4日目から満月後の十八夜までで、この期間に果菜の実は汁気がもっとも少なくなる(地上部水分の拡散時期)。」(p.63-64)


 残念なことに、翻訳がまずいせいか、この部分がちょっと分かりづらいのですが、Bの期間は植物の地上部に水分が拡散する時期で、そのなかでもAの期間は、実などに水分が集中する時期だということのようです。


 根菜類に関しては、逆のことが言えるのですが、『農業と月』によれば、味が良くなり、栄養価が高まるのは、二十六夜から新月の3日までの間で、すぐに食べるのならこの期間がベストだそうです。ただし、長期間保存したり、種芋として利用する場合には、地上部に水分が拡散して地下部の水分が減少する、上弦の3日後から満月にかけての時期がベストだそうです。


 他にも、剪定の時期や雑草を刈る時期についても、色々な知恵があるのですが、基本は、新月の4日後から満月後の十八夜までの期間が、植物の地上部に水分が引き上げられる時期で、そのなかでも上弦の3日後から満月の3日後(中潮〜大潮)の時期には地上部に水分が集中するようです。逆に、満月の4日後から新月の3日後(三日月)までは、地下部に水分が拡散する時期で、その中でも二十六夜から新月にかけて(中潮から大潮)の時期には、地下部に水分が集中するようです。そのことを頭に置いて、農作業を進めていくとよい、ということでしょう。


 こうした文献や、地域に伝わる伝承などをもとにしながら、日本の各地でも、月齢を農作業のスケジュールに取り入れる動きが広がっているようです。その中でも面白いのは、大潮前のタイミングを見計らって施肥を行なうという実践と、大潮後のタイミングを見計らって害虫防除を行なうという実践です。


 前者の施肥に関しては、ナスの栽培者で、試しに小潮の時期(上弦あるいは下弦の前後)に施肥をしてみたら、病害虫が多発して大変なことになったという人がいて、「それなら逆に大潮の時期に施肥をしたらどうだろうか?」と思って、試してみたら、これがうまくいった!? という方がいたそうです。先に取り上げた『農業と月』でも述べられていますが、どうも植物は大潮の時期に生長が活発になるので、それに合わせて大潮前に施肥をしてやると、生長や収量が良くなるのではないか? と考えられています。逆に小潮の時期は生長が鈍るので、この時期に施肥をすると、吸収されなかった肥料分が植物体内に貯まってしまって、バランスを崩して、病気になりやすくなったり、害虫を引き寄せやすくなったりするのではないか? ということです。 


 さらに細かい実践を行なっている人たちは、満月前後の大潮前には、地上部の生長が旺盛になるので、葉肥であるチッソ(N)を中心とした施肥を行い、新月前後の大潮前には、根肥であるカリ(K)を中心とした施肥を行なう・・・という方もおられるようです。また、肥料を吸収させるのには水が必要なので、潅水のタイミングも重要なのですが、これも大潮前に行なうと良いようです。


 後者の害虫防除に関しては、満月あるいは新月の大潮前のタイミングで、害虫の皆さんが結婚して、子作りに励まれる・・・というか、交尾して産卵するので、その卵が孵化しはじめるタイミング、つまり満月あるいは新月の大潮から中潮に切り替わるタイミングで防除をすると、非常によく効いて、害虫を抑えられる・・・ということです。殺虫剤の散布に関して言えば、例えば、あらゆる野菜を食べると言っても過言ではない、ハスモンヨトウという方がおられますが、この方はだいたい5回脱皮して、6齢幼虫になってから蛹になり、土中で過ごしてから、成虫になってさらなる繁殖に励まれるか、晩秋には土に潜って越冬されます。


 この方をやっつける農薬としては、モスピランとかアファームとか・・・主に鱗翅目の昆虫をターゲットにする農薬が用いられるのですが、残念なことに、3齢幼虫くらいまでしか殺せません。大きくなってトマトに穴を開けて、そのなかでとぐろを巻いている人などには、直接かけてもびくともしない(TT)。逆に言うと、孵化したばかりの幼虫にはよく効くわけで、そのタイミングを掴まえることができれば、少ない散布量で最大の効果を上げることができるわけです。(『現代農業 特集「月と農業」』参照)


 この他にも、花のつき方や収穫量と月齢の関係や、潮の満ち干きと植物の生長の関係など、生活がかかっていて、日々、植物を観察している農家さんたちは、かなり細かいところまで調べているようです。こうした月齢や潮汐のリズムと植物の生長の相関関係を調べることによって、農家さん的には、前もって植物の変化を予知できて、その変化に対して手を打てることにメリットがあるようです。そして、旧暦との関連で言うなら、例えば果菜の種まきは12〜15日とか、葉物の種まきは26〜30日とか、防除は5日前後と20日前後、追肥は11日前後と26日前後・・・みたいに、日にちが決まっていて分かりやすかったりします。



 学生時代に、友人と鳥取砂丘を見に行ったとき・・・
ぼろぼろの民宿の部屋でちょっと仮眠をとったら、
なぜか・・・音に満ちた世界に入っていた・・・


 たとえるなら、オーケストラの音あわせみたいな感じ!?
あの次元の音世界をいちばんリアルに表現しているのが、
これだと思う。


 あとは、コルトレーンの「メディテーションズ」が近いんだけど、
まあ、ちょっとアヴァンギャルドすぎるというか、
騒がしすぎるというか・・・