妖精さんの独り言 4−3

2.『アナスタシア』
(ウラジミール・メグレ著)


続いて紹介する『アナスタシア』(ウラジミール・メグレ著 ナチュラルスピリット刊)は、原書では全10巻、邦訳では今のところ第3巻まで出版されているシリーズもののうちの、最初の巻です。ソ連崩壊後のロシアの若手実業家が、シベリアの奥地で「アナスタシア」という名前の美女・・・酷寒のシベリアで「一糸纏わぬ姿で暮らしている」とまではいきませんが、薄着で暮らしている方・・・と出会い、一夜を共にして、子どもを作ってしまう・・・という羨ましい本です。


 というのは、あまり重要なポイントではなくて、シベリアのタイガで暮らす仙女のような美女から、色々と大事なことを教わり、その内容を出版するように言われて奮闘するなかで、自らの会社の経営が傾き、ホームレスのような生活をするまでになりますが、目に見えない導きと縁のある人たちの助けで、本の出版に漕ぎ着けて、アナスタシアの教えと生き方をロシアのみならず、世界にも広げることができた・・・というウラジミールさんの苦労が綴られたのが、第2巻だったりします。


 そのアナスタシアさんは何故か、ソ連崩壊時の経済混乱期に多くの人たちの命を救ったとされている「ダーチャ」(家庭菜園つきの別荘)で野菜を作っている「ダーチュニク」(菜園家)こそが、この世界を救うのだ! と考えていて、日々、彼らにテレパシーを送って菜園作業を助けているそうなのですが、その彼女が「ダーチュニク」へのメッセージとして述べたのが、次の文章です。ちなみに、今をときめくプーチン大統領も、不遇の時期には失脚していたエリツィンさんを支えて、ダーチャで畑を耕して再起に備えておられたとか。ここで紹介するメッセージの他にも、「一つの庭に、一家族の蜜蜂が必要です」とか、「毎朝、菜園のなかの草地に横たわって、虫さんたちに毛穴を開いてもらってください」とか、かなり私たちにはハードルの高いメッセージもあるのですが、ここではあまり怪しくないものを紹介するに留めます。



種はお医者さま


 「種は莫大な量の宇宙からの情報をもっている」とアナスタシアは言った。「人間がつくった何ものも、そのサイズにおいても正確さにおいても、種にかなうものはない。種は、自分がいつ発芽すべきか、地中からどんな水分を摂取し、どのように太陽や月や星々からの放射を利用すべきか、千分の一秒単位の正確さで知っている。どんなふうに成長して、どんな果実を実らせればいいのかも知っている。


 果物や野菜などの植物の実は、人間を元気づけて持久力を高める目的で創られている。人間がこれまでつくってきた、そしてこれからつくるどんな薬よりも強力に、植物の実は人間の体組織を襲うあらゆる病と効果的に闘い、しっかりと抵抗する。


 ただ、そのためには、実になる前の種に、その人の体の状態を知らせておかなければならない。植物の実が、ある特定の人の病気・・・現在かかっているか、発病間近な状態・・・を癒すには、種が実の中身になる物質を、その癒しに必要な成分比率で満たしながら熟成していくプロセスが不可欠だから。


 キュウリやトマトやその他の、庭で育てる植物の種に、自分の健康に関する情報を伝える基本的な方法は・・・。


 蒔く前の種をいくつか口に入れ、舌の下に少なくとも九分はおいておく。


 次に、それを口から出して、両手のひらに包んで約三十秒間もったまま、その種を植える地面の上に裸足で立つ。


 両手のひらをそのまま開いて、そこにある種をゆっくりと注意しながら口のところにもっていき、種に向かって肺から息をそっと吹きかける。あなたの息で温められたその小さな種は、あなたの体の中にあるものすべてを知る。


 そのあと種をのせた両手のひらをそのまま開いて空に向け、三十秒間、種を天体に見せるようにする。その瞬間、種は発芽の時期を決める。そしてすべての惑星がそれを手助けする。あなたのために全惑星が、新芽が必要とする光を天から降りそそぐ!


 こうしてやっと、種を蒔くことができる。種を蒔いてすぐに水をあげてはいけない。種を包んでいるあなたの唾液や、種が取り入れた情報が、すべて消えてしまうから。水をあげるのは種を蒔いてから三日後がいい。


 種蒔きは、それぞれの野菜に適した時期にしなければならない(人はすでにそれを太陰暦によって知っている)。遅れて蒔くよりは、水なしで、本来の時期より早めに蒔くほうがまだいい。


 種から生まれた新芽の隣に雑草が生えていても、すべて除去してはいけない。少なくとも各種類ひとつずつは残すこと。その雑草は抜かないで切ればいい」


 アナスタシアによれば、種はこうして蒔く人に関する情報を取りこみ、実を実らせていくまでに、宇宙と地球から、その人にとって必要不可欠なエネルギーを可能な限り最大限に吸いこむという。


 雑草にもそれぞれの役割があるのだから、やたらに除去してはいけない。ある雑草は植物を病気から守り、またある雑草は、その植物に補足的な情報を提供することもあるという。


 植物が育っていく間、種を蒔いた人とのコミュニケーションは不可欠で、その期間に最低一度は、できれば満月の夜、その植物に触れてあげることが大切なのだそうだ。


 アナスタシアが言うには、このようにして育った果物や野菜などの植物の実は、それを蒔き、育てた人が食べると、まちがいなくその人のあらゆる病を癒すばかりか、老化のスピードを緩慢にし、悪習を取り除き、さまざまな知的能力を増大させ、心の平安までもたらすのだそうだ。


 また、今までに述べた一連の作業は、庭に植えられる作物の種類ごとに行なわなければならないが、キュウリ畑やトマト畑などのように、ひとつの作物がたくさん栽培されている畑では、すべての種について、先に述べた手順を踏む必要はなく、そのうちのいくつかにたいして行なえば十分なのだそうだ。


 このような方法で育った植物の実は、他の方法で栽培されたものとは、味だけでなくさまざまな面で異なっている。分析すれば、その実が含む物質の成分比率も異なっているはずだという。


 苗木をシャベルで掘ったくぼみに植えるときは必ず、素手で、そして裸足で行なうこと、手の指と足の指で土を整え、そこにつばを吐きかけること、とアナスタシアが言うので、私が「なぜ足なんだ?」と聞くと、彼女は、体の病に関する情報を含んだ物質(おそらく毒素と思われる)は足から汗として流れでるからだと答えた。苗木はこの情報を取りこみ、それを実に運び、実はその病と闘う力を蓄える。だから庭をときどき裸足で歩くといい、と彼女は付け加えた。


 「どんな作物を栽培したらいいんだい?」と私がたずねると、「たいていの庭にあるようなもので十分。ラズベリースグリグーズベリー、キュウリ、トマト、イチゴ、そしてリンゴ。甘酸っぱいサクランボや花を植えるのもいい。それぞれの種類ごとの数の大小や、植える区画の広い狭いはまったく関係ない」と彼女は答えた。


「最大限のエネルギーに満ちた微気候を自分の庭に生み出すことが大切。そうするために欠かせないのは、ヒマワリ(少なくともひとつ)のような植物。それと、1.5メートルか2メートル四方ぐらいをとって、そこに穀物(たとえば、ライ麦や小麦)を植えること。


 それから、はじめから庭に生えていた種々さまざまなハーブを、最小で2メートル四方、島のように残さないといけない。この島は、人工的に種を蒔いてつくるのではなく、自然のままがいい。庭にそういうハーブが残っていない場合は、森からハーブの生えている土ごともってきて、その島をつくらないといけない」


 すぐ近くに、たとえば庭を区切るフェンスの向こう側などに、いろいろなハーブが生えていても、庭の中に島をつくらないといけないのかという私の問いに答えて、彼女は言った。


 「大事なのは、植物の種類の多様性だけでなく、それがどのように植えられているかということ。自分で植えて育てて、植物と直接コミュニケーションをとることによって、その人の情報がその場に充満していく。


 植物の植え方について、大事な点についてはもう話したわ。大切なのは、あなたを取り囲む自然の一部を、あなたに関する情報で満たすこと。そうして初めて、あなただけに有効な癒しと命のサポート効果が、植物の実だけから得られるものよりさらに飛躍的に高くなる。あなたがたがワイルド、野生と呼ぶ自然・・・本当はワイルドじゃなくて、ただなじみが薄いだけ・・・の中には、あらゆる病を完璧に治す多くの植物が存在している。それが、これらの植物が創られた理由。だけど、人間は、それを判断する能力をほとんど失ってしまった」


 われわれの世界には癒しのハーブを販売している専門の薬局や、ハーブで病を癒す医者やヒーラーといった専門家もたくさんいると言うと、アナスタシアは言った。


 「いちばんの医者はあなた自身の身体よ。身体は最初から、あなたがどのハーブをいつ使うべきかを、食べたり呼吸したりする方法を知っているのと同じようによく知っている。


 身体は本来、病気が現れる前に、未然に防ぐ能力をもっている。そして、誰もあなたの身体を別のものと取りかえることはできない。なぜなら身体は、名医である神があなただけに与えたものだから。私は、身体があなたにとって益となる働きをするためにはどうすべきかについて話しているだけ。


 あなたと庭の植物との間にゆるぎない関係が確立されたら、植物たちがあなたの病を治し、面倒を見てくれる。彼らはあなたの健康状態について的確な診断をし、最も効果的な、あなた専用の特別な薬を作ってくれる」
(p128−131)



 こういう文章を読んで、「ほんまかいな? うそやろ!」と思うか、「へえ! 早速、やってみよう!」と思うか? おそらく前者の方がまともだと思うんですが、私的には、「シベリアの美女」と聞くだけで、「よっしゃあ!」みたいな感じ。「美女」と言いながら、実はメグレさんが「熟女」好きな人で、実際のアナスタシアさんは我々の想像とはかけ離れた存在だという可能性もあるのですが・・・基本、私も騙されやすいのかもしれません。


 ただ、日本で実際にこれを実行に移そうとすると、いくつかの問題に直面してしまいます。まず、市販の種のほとんどが農薬で種子消毒してあるので、命がけの行為になってしまいます(まあ、大丈夫でしょうが)。種子消毒をしていない種を手に入れるか、あるいは自分で自家採種するのが一番、確実ということになります。


 あと、人目がある時間帯に、素足で畑をうろついたり、「ペッ、ペッ」と畑の土に唾を吐きかけたり、両手を空に向かって差し伸べたりしていたら、どう考えても近所の人たちから「変人?」と思われてしまうので、台風とか雷雨で外出している人が居ない時や、丑三つ刻、夜明け前などの時間を見計らって、実行に移す必要があります。その点、周囲に人家がない畑だと、気が楽かもしれません。


 さらに、水やりの問題があって、実はペレランドラ農園のミシェルさんも、水やりは播種や苗の定植のときだけで、あとは潅水しないと言っているのですが、どうも日本の気候、特に夏の高温乾燥時には、水やりなしで根付かせるのは至難の業だったりします。ポリマルチを張っていれば、何とかならないこともないのですが、「ポリマルチはダメ!」と妖精さんに言われるとお手上げです。なので、そこは無理せずに、植物の育ち具合や天候を見ながら、臨機応変にやっていく必要があります。


 それで、一番の問題は、「私専用に育てた野菜さんたちを、他の人たちに食べさせても大丈夫なのだろうか?」みたいなこと。まあ、問題は出ないと思うのだけれど、アナスタシアさんのやり方に従うなら、一人ひとりが自分専用の畑を持たないとダメ? ということになってしまいます。いや、種まきや苗の定植のときだけ、本人に情報入力をしてもらって、あとの作業は他の人に委託する・・・ことも可能だとは思いますが、そこまでやるのはなかなか大変かもしれません。


 まあ、色々な問題はあるのですが、自分の手で耕すことのできる土地があるのなら、アナスタシア方式で、その土地や自然を「あなた色」で染めてみるのも面白いでしょう。「地域再生」と言うときには、その地域の風土や自然のなかに、もう一度、そこで暮らす人たちの情報を満たしていくこと、そのことによって土地や自然との深いつながりをもう一度、確立しなおすことが必要かもしれません。というか、人間には実はそういった自然との「共創作業」を行なう能力が備わっているということを、もう一度、思い出すことが大事なのでしょう。


 自分の庭、自分の菜園を作り、そのなかで植物との関わりを深めていくというプロセスは、心理療法の「箱庭療法」を目に見える形でやっていくようなものかもしれません。しかも、ただ庭を造るだけでなく、そこにある植物の生成消滅のプロセスに心を合わせて、植物を通して天体からの情報を受け取っていくという意味では、心を整理して癒していくだけに留まらず、自分の心の可能性を深め広げていき、自然や宇宙との親密な関係をもう一度取り戻していくことにつながっていくかもしれません。


アナスタシア (響きわたるシベリア杉 シリーズ1)

アナスタシア (響きわたるシベリア杉 シリーズ1)