妖精さんの独り言 4−5

土地との調和


 自分のまわりの風景や自然霊、土地の天使たちを意識することは、人生の質を向上させます。自分が住んでいたり、仕事をしている場所の詳細な地図を手に入れるように、私は友人たちやワークショップ参加者たちに勧めています。とくに、町が発展して建物などが密集している場所に住んでいる人たちは、まだ土地が開発されていなかった頃の地図を手に入れるべきです。


 これらの地図を見ると、地形の輪郭など、実際の感覚がつかめます。昔の水源地とか、丘や坂があったところに目を向けてみましょう。そして、自分の土地にいるすべての精霊たちを意識してみましょう。


 その土地の風景に手を加えたり、新しい建物を建てたり、庭を造ったりする場合には、それを実施する前に、その土地、植物、動物などの精霊につながり、彼らの意見を聞くのが最も良い方法です。たとえば、自然霊たちは美しく設えた庭園の中でも、自然が残された場所を好みます。スロベニアの彫刻家であり、土地の精霊たちの研究者であるマルコ・ポガチニックによると、「野原がそのままの栄養素を保つためには、野生の垣根も残すべきです。これがないとノーム(地の精霊)や成長のエレメンタルは土地に根を下ろすことができません。作物は育ちますが、本当の精気は養われません」とのことです。


 自然霊たちのニーズに対し、しっかりとした意識を持っている生態系農業や、人智学的なアプローチを持つ園芸の流派もあります。この意識改革の先駆者がフィンドホーン・ファンデーションでした。彼らの農業や園芸へのアプローチの基盤にあるのは、地球それ自身に生命が宿っているという理解です。さまざまな種類の精霊たち・・・牧神のパン、植物の精霊、ノーム、天候の精霊・・・すべてが彼らの仕事に関わっています。彼らは自然の全般的なサイクル、季節のリズム、月の位相などの重要性も理解し、農業計画を作成したりそれを実行に移すとき、これらすべてを念頭に置いています。いうまでもなく、それは有機農法で行われ、化学肥料はいっさい使いません。結果として、野菜はヘルシーで生命エネルギーに満ちています。花も素晴らしいものです。私はそのような場所にいると、大地が肯定的な意志をあらわして光り輝いているのが見えます。


土地の精霊との協力


 このエクササイズはあなたが何かを建てようとしているか、庭や風景に変化を加える計画があるときのものです。まず最初に、庭のデザイン、家の建築や都市計画の全体像をチェックしてみるところから始めます。さまざまな異なった可能性があることを意識してください。


 いつものように心を静め、今から始めようとしている仕事について意識を持っていきます。充分な時間をとって、どのような結果を期待しているのか思い描きます。


 次に、対象となる場所の風景に意識を向けます。しばらく、その感覚を味わいます。地形を見ましょう。どのような土、岩石や粘土が下にあるでしょうか。植物や動物にも意識を向けます。


 この地域の一部である精霊たちに意識を向けます。暖かい挨拶をして、彼らが来てくれたことに感謝します。しばらく、彼らを感覚的に捉えることに集中してください。彼らに何かの意思表示をするように導かれているでしょうか。もし、それがよいと思えたら、そのように意思表示してみます。生命を感じ取り、彼らの仲間になります。


 今の環境やそこの住民としっくりと馴染むまで、このエクササイズを何回か行ってみましょう。つながりがしっかりできたと思えたら、以下に進んでください。


 黙想をして波動を合わせましょう。つながりができたと思えたら、精霊たちに、彼らの空間であなたが建物を建てるとか、ガーデニングを行ないたい旨を伝えましょう。彼らの迷惑になることを謝り、彼らのアドバイスに従うという意志を伝えてください。


 静かに座り、どう感じるか、どのような印象を受けたか確認します。普通の状況では、彼らは喜んで協力してくれると感じられるはずです。ある特定の場所だと、特定の木のノームなどから抵抗を感じることもあります。気持ちのよい合意が得られるように行ってみてください。


 このエクササイズを何回か行いましょう。受けた印象については真摯に受け止めてください。


 もし、頑強に抵抗する精霊たちがいても、どうしても建物を建てたり、土地を利用する必要があるのであれば、次のようにして、さらに偉大な精霊を呼ぶ必要があります。


 先に述べた方法を全部実行してから、抵抗する精霊たちを意識します。彼らに迷惑を及ぼすことを謝ってください。そして、土地の天使であり、癒しを施す牧神パンがそこに存在し、困った人を助けてくれるということを思いつつ、招待します。癒しの天使とつながり、ここに来てくれたことにお礼を述べます。抵抗する精霊がいて困っているということを、はっきりとこの天使に伝えます。天使に謝り、困っているあなたの仕事の精霊が前進できるようにサポートを頼みます。困っている精霊はその場に磁気的に縛られていて、持っている青写真が完成されるまで解放されないのだということを理解してください。


 さらに、天使がこの小さな精霊を助けていることを意識します。それから、感謝の意を表します。この状況について考えながら、何か感謝の気持ちを形にしたいと思うかもしれません。そう感じられたら、そのようにしてください。


 もし、あなたが心の痛むようなひどい扱いをされた土地に遭遇したら、あなたはその土地を癒し、再生させるために何かできないかと思うかもしれません。


土地を癒す


 傷ついた土地と苦しんでいるその精霊について静かに黙想してください。彼らに愛と同情をもって、意識を向けてください。人間を代表して謝罪してください。彼らにあなたの愛と悲しみを伝えてください。


 そして前のように、土地の癒しの天使について黙想してください。その天使に波動を合わせ、招待し、ここに来てくれたことに感謝してください。環境を見守り、そしてけてくれるように頼みましょう。


 しばらく、その風景の中で精霊や天使たちとともに座ります。癒しをもたらすために何ができるか黙想してみます。イメージや考えが浮かんだら、謙虚に受け取りましょう。特定の場所に何かを植えるようにとか、その場所に何か芸術品を創るように、または歌をうたってほしいと言われるかもしれません。何か儀式を行なったり、定期的に黙想してほしい、またはヒーリングをしてほしいと言われるかもしれません。何をすべきかはっきりするまで、このエクササイズを何回か繰り返す必要があるかもしれません。それが何かが分かったら、行動に移します。最後は謝罪と同時に、お礼を述べます。(p.161−165)


 土地の妖精さんの声に耳を傾けるということは、その土地の本来のヴィジョンを掘り起こすということでもあります。土地の歴史を調べたり、あるいは古くからそこに住む人たちの話を聞いたりすることも、土地の妖精さんとの「共同創造作業」を行なう上では、とても大事なことかもしれません。


 ただし、「土地の癒し」のワークのところで出てきたように、過去の青写真・・・それは妖精自身のものか、あるいは過去に誰かに頼まれたものか・・・に縛られて、動けなくなっていたり、新しいものに抵抗したりする妖精さん(のエネルギー)が存在する場合もあります。そういう場合には、より上位のエネルギー的存在に頼んで、過去の青写真を解除して(俗に言う「願解き」?)、新しい青写真を描けるようにしてもらうことが必要かもしれません。土地の妖精さんとコンタクトして、その協力を仰ぐことで、土地のエネルギーを動かして、より深い次元から地域の再生を図っていくことができたら、面白いかもしれません。まあ、日本の場合は、その土地の産土神様のところへ挨拶に行くのが、基本かもしれませんね。


妖精さんの独り言 4−4

3.『精霊 〜共同創造のためのワークブック』
(ウィリアム・ブルーム著)


 最後に、私のお薦めの本でもある『精霊』(ウィリアム・ブルーム著 太陽出版)から、まずは、妖精さんもとい精霊さんとつながる基本的なテクニックの紹介をしたいと思います。まあ、リラックスして、まわりの空気、まわりの雰囲気を敏感に感じようとするだけなんですが・・・最初から「精霊や妖精の姿が見える」という人は少ないようです。むしろ、微細な感覚的な変化、まさに空気が変わるとか、ヴァイヴレーションが変わるとか、そういうレベルで感じ取られるようです。


 そういう意味では、コークリエイティブ・ガーデニングのミシェル・スモール・ライトさんのO−リングの技法を併用すると、さらにやりやすいかもしれません。「妖精さん、つながりましたか?」とか、「精霊さん、ここにおられますか?」と尋ねて、O−リング・テストで確認するようにすれば、何となくの感覚の変化だけでなく、確証を得られるかもしれません。


 ちなみに私も、日頃、「妖精さんが・・」とか言っているわりに、その姿を見たことはありません。感覚の変化みたいなものも、あるっちゃあるし、ないっちゃない・・・という感じで、いまいち(TT) もっぱら、O−リング・テストでつながったり、相談したり、遊んだりしています。そもそも、そのO−リング・テストは正確なのか? という疑問はありますが、「まあ、とりあえず、結果を見て判断しよう」という感じで、あまり気にしていません。



基本的な技術

 すでにお分かりかと思いますが、精霊を感覚で捉えるには一つの基本的な技術があります。心を静めて、自分のまわりの空気を感じ取ることです。この技術を身につけるためと称して、根拠のない話が語られています。強い集中力が必要だとか、霊的に純粋でなくてはいけない、とかです。私の知っている限りでは五分以上、テレビや映画を見たり、音楽を聴いたり、風景を見ていることができたら、あなたはその技能があるといえるでしょう。


 リラックスした状態で、しばらく静かにしている必要があります。リラクゼーションを説く本はたくさんありますし、実際、ほとんどの人は静かに落ち着いて座ることができます。もし、とくに助けが必要でしたら、市販されているリラクゼーションのテープを一本買うか、何本か買って試してみるとよいでしょう。以下は、私がリラクゼーションをしたいときや、自分の中心を定めるときに役立つヒントを集めました。



リラックスと集中

 楽な姿勢で座るか立つか、してください。そして二分ほど、まったく何もしないでいてください。徐々に気持ちが落ち着いてきます。それでも落ち着かなかったら、もう少し待ちましょう。


 用意ができたら自分の体を意識してください。あなたの胸とお腹は大きな洞窟のようです。その洞窟にあなたのすべての内臓が収まっています。内臓がそこにあることを喜んでください。内臓に声をかけてください。


 それから意識をお腹の下に向けてください。お腹の底まで届くように、数回、深い呼吸をしてください。大きくため息をつくようにしても結構です。


 リラックスして自分の身体を楽にしてください。


 自分の呼吸のリズムに注意を向けて、鼻から空気が出たり入ったりするのを感じてみてください。自分の身体、そして自分の足の下にある大地を、静かに意識します。ゆっくりと自分を解き放すようにしてください。



 この訓練は何回も繰り返すうちに楽にできるようになります。ある部族やシャーマンの伝統などでは、この静けさをリズミカルなドラムやダンスで導入します。ドラムの鼓動と身体の動きによって気持ちが落ち着くように誘導するのです。これはトランスのような状態だと言われていますが、意識ははっきりしています。このための音楽のテープも購入できます。



精霊と最初のつながりを持つ


 どんなに簡単なことか、実際に行ってみましょう。もし、友人と練習できれば、あとでお互いの印象を比較できるので参考になると思います。


最初のつながり


 まず、自分が会いたいデーヴァや気に入っている場所を選びます。これはあなたがどういう人であるか、そして何をするのが好きかによって違ってきます。

 探求したいと思われる可能性のある事柄の短いリストを作ってみました。


家庭・・・家を守る精霊。
お気に入りの植物/プランターのそば・・植物のデーヴァ
教会/寺院など、祈りの場・・・祈りの天使
特定の美しい景色の中・・・土地の天使。


 公園や教会/寺院、自然の中で何かの存在を感じるところがありましたら、スタートするにはとても良い場所でしょう。

 先ほど説明した方法か、ほかに良い方法があればそれで心を落ち着け、自分の中心を見つけてください。リラックスした受容の態度が鍵だということを思い出して下さい。

 あまり真剣に、真面目になり過ぎないように注意し、ゆったりとして哲学的な見地で物事を見るという感じです。何も期待しないで、静かに待ってみましょう。

 用意ができたら、意識を周囲に向け、空気を感じてみてください。何か感じたら、静かに注意を向けてみましょう。あなたの心は何かに抵抗したり、質問したりしたくなるかもしれません。すべて静かに受け入れてください。

 そして声を出しても出さなくてもかまわないので、デーヴァが来てくれたことに気づいたことをデーヴァに伝えます。

 「私は、今ここに来てくれているあなたを感じ、あなたに敬意を払います」
 リラックスして、その時の印象や感覚を意識してください。辛抱強く、どう感じるか、何が思い浮かぶかに注意を向けてみましょう。

 初めて何らかの感覚を得た人たちもいると思います。何回か経験してみないと、本当に自分が何かを感じたと納得できないかもしれません。何か本当の関係ができたと感じられるまで、何回か瞑想する必要があるかもしれません。

 ある人たちにとっては、こういった内側に秘められた領域の経験は、はっきりしたものです。しかし、ほかの人たちにとってはとても精妙なものです。

 ほんの微妙な感覚や霊妙(エセリアル)な印象に気づき、その感覚を信用すること。このようなワークをすることに抵抗感があるようでしたら、いくつかのアファメーション(声を出して肯定すること)を行うとよいでしょう。自分がしたいことを妨害している低い次元の考え方のパターンを早く、しっかりと変えてくれます。



精霊のワークへのアファメーション


 自分にあった方法で心を静かにしてみましょう。そして次のアファメーションの中の一つ、もしくはいくつかを選んで言ってみてください。声を出しても出さなくても、どちらでも結構です。自分のアファメーションを創作するのも効果的です。


1 私はデーヴァや天使に対して感受性が敏感でオープンです。
2 私の心(思考)は私のデーヴァや天使に対する敏感な感受性を妨害しません。
3 宇宙は私が精霊と働くことを支援してくれます。
4 神は私を愛し、神は精霊たちを愛しています。神は私たちと精霊たちが共に働くことを喜びます。
5 私はデーヴァと働き、世界を変容させます。
6 世界は私たちが精霊たちと働くことを必要とします。
7 精霊たちと働くのは、私の歩む霊的な道の一部分です。
8 精霊たちへの気づきは私を成長させ、神や人のために尽くすことに役立ちます。


 最初は、このようなアファメーションを本心から思い、心を込めて口にするのは難しいかもしれません。必要だと思うだけ何回でも定期的に、そして本当だと感じられるまで言ってみましょう。


 精霊たちと関係を築き、波動を合わせたいと思うなら、時間をかける必要があります。特定の精霊たちとつながりを持ち、つながる場に行けることが人生における大きな喜びとなります。それは古くからの友人に会いに行くような感じです。(p.112−116)


 さて、それでは精霊あるいは妖精の役割とはいったい何なのでしょうか? 私たち人間と彼らが「共同創造」を行うことの意味はどこにあるのでしょうか? そのヒントになりそうな文章も紹介しておきましょう。



形をつくるための橋


・・・形を創造するためのエネルギーの資質を提供するのが彼らの主な役割です。ドロシー・マクリーンは著書『フィンドホーンの庭園』のなかでこう語っています。


「鉱物、野菜、動物や人間の物理的な形態は、デーヴァ王国の働きによって形を与えられたエネルギーです。ときに私たちは、この働きを<自然の法則>と呼びますが、デーヴァたちは絶え間なく、喜びをもってその法則を体現してくれているのです。<私たちはあなた方のように物を、外的な物質化した形、固体としては見ていません。私たちの見るのは、内在する生命力を備えた一つの状態です。私たちはあなた方が見たり、感覚でつかむものの舞台裏で働きます。これらは同じメロディーのなかの違った音程のように中でつながっているのです。私たちの見ているのは生命の異なったあり方です>」


 その形は木であったり、滝であったり炎であったりします。そしてそれは、理想の概念の組み合わせ、たとえば正義とか民主主義とか、ヒーリングと儀式などの活動なら、どんなものでも含まれます。以上を少しまとめてみましょう。


※ デーヴァたちは物質世界にそのパターン(青写真)や一貫性を与えます。
※ 物質世界・・・鉱物、植物、動物、人間や人間の行動・・・は、デーヴァたちに目的や活動を与えています。
※ デーヴァ界と物質世界は互いを織り込みながら、この現実を創造しています。
※ デーヴァたちがいなくては、私たちの物質世界は一貫性を持つことができません。
※ 物質世界がなくては、デーヴァたちは目的を持つことはできません。


 この仕組みを理解すると、デーヴァの本質である精霊の世界が、トランス状態の神秘家しか遭遇できない得体のしれない現象ではないことが分かります。すべての存在の「接着剤」として精霊界はいたるところに浸透しているのです。(p.88−89)



 ペレランドラ・ガーデンのミシェルさんも、自然のディーヴァの「理想の自然」は、ジャングルのような森だったり、草ぼうぼうの野原だったりするので、何もかも妖精さんにお任せでは、「野生」とか「手つかずの自然」になってしまうと言っています。そこに人間である私たちの側から、自然にも配慮した形でリクエストを行なうことで、何か新しいものが「共同創造」されることになります。


 もちろん、すべてのリクエストを叶えてくれるわけではないし、思ってもみなかった方法で叶えられるリクエストがあったりしますが、妖精さんの側でも、少しでも人間のリクエストを叶えられるように、努力してくれるようです。また、「あれはいいけど、これはだめ」みたいな感じで、相談しながら、新しいヴィジョンを形成していくこともできます。まあ、何というか、だめもとで色々と頼んでみたり、アホなことを聞いてみたり、逆に何かリクエストはないか聞いてみたりして、「共同創造」のプロセスを楽しむのが一番のような気もします。


 それでは次に、土地(=地域)の精霊とつながり、彼らと調和を保ちながら、その土地で建設や都市計画、事業や活動、さらには癒しを行なっていく方法を紹介しましょう。


精霊(スピリット)―共同創造のためのワークブック

精霊(スピリット)―共同創造のためのワークブック


妖精さんの独り言 4−3

2.『アナスタシア』
(ウラジミール・メグレ著)


続いて紹介する『アナスタシア』(ウラジミール・メグレ著 ナチュラルスピリット刊)は、原書では全10巻、邦訳では今のところ第3巻まで出版されているシリーズもののうちの、最初の巻です。ソ連崩壊後のロシアの若手実業家が、シベリアの奥地で「アナスタシア」という名前の美女・・・酷寒のシベリアで「一糸纏わぬ姿で暮らしている」とまではいきませんが、薄着で暮らしている方・・・と出会い、一夜を共にして、子どもを作ってしまう・・・という羨ましい本です。


 というのは、あまり重要なポイントではなくて、シベリアのタイガで暮らす仙女のような美女から、色々と大事なことを教わり、その内容を出版するように言われて奮闘するなかで、自らの会社の経営が傾き、ホームレスのような生活をするまでになりますが、目に見えない導きと縁のある人たちの助けで、本の出版に漕ぎ着けて、アナスタシアの教えと生き方をロシアのみならず、世界にも広げることができた・・・というウラジミールさんの苦労が綴られたのが、第2巻だったりします。


 そのアナスタシアさんは何故か、ソ連崩壊時の経済混乱期に多くの人たちの命を救ったとされている「ダーチャ」(家庭菜園つきの別荘)で野菜を作っている「ダーチュニク」(菜園家)こそが、この世界を救うのだ! と考えていて、日々、彼らにテレパシーを送って菜園作業を助けているそうなのですが、その彼女が「ダーチュニク」へのメッセージとして述べたのが、次の文章です。ちなみに、今をときめくプーチン大統領も、不遇の時期には失脚していたエリツィンさんを支えて、ダーチャで畑を耕して再起に備えておられたとか。ここで紹介するメッセージの他にも、「一つの庭に、一家族の蜜蜂が必要です」とか、「毎朝、菜園のなかの草地に横たわって、虫さんたちに毛穴を開いてもらってください」とか、かなり私たちにはハードルの高いメッセージもあるのですが、ここではあまり怪しくないものを紹介するに留めます。



種はお医者さま


 「種は莫大な量の宇宙からの情報をもっている」とアナスタシアは言った。「人間がつくった何ものも、そのサイズにおいても正確さにおいても、種にかなうものはない。種は、自分がいつ発芽すべきか、地中からどんな水分を摂取し、どのように太陽や月や星々からの放射を利用すべきか、千分の一秒単位の正確さで知っている。どんなふうに成長して、どんな果実を実らせればいいのかも知っている。


 果物や野菜などの植物の実は、人間を元気づけて持久力を高める目的で創られている。人間がこれまでつくってきた、そしてこれからつくるどんな薬よりも強力に、植物の実は人間の体組織を襲うあらゆる病と効果的に闘い、しっかりと抵抗する。


 ただ、そのためには、実になる前の種に、その人の体の状態を知らせておかなければならない。植物の実が、ある特定の人の病気・・・現在かかっているか、発病間近な状態・・・を癒すには、種が実の中身になる物質を、その癒しに必要な成分比率で満たしながら熟成していくプロセスが不可欠だから。


 キュウリやトマトやその他の、庭で育てる植物の種に、自分の健康に関する情報を伝える基本的な方法は・・・。


 蒔く前の種をいくつか口に入れ、舌の下に少なくとも九分はおいておく。


 次に、それを口から出して、両手のひらに包んで約三十秒間もったまま、その種を植える地面の上に裸足で立つ。


 両手のひらをそのまま開いて、そこにある種をゆっくりと注意しながら口のところにもっていき、種に向かって肺から息をそっと吹きかける。あなたの息で温められたその小さな種は、あなたの体の中にあるものすべてを知る。


 そのあと種をのせた両手のひらをそのまま開いて空に向け、三十秒間、種を天体に見せるようにする。その瞬間、種は発芽の時期を決める。そしてすべての惑星がそれを手助けする。あなたのために全惑星が、新芽が必要とする光を天から降りそそぐ!


 こうしてやっと、種を蒔くことができる。種を蒔いてすぐに水をあげてはいけない。種を包んでいるあなたの唾液や、種が取り入れた情報が、すべて消えてしまうから。水をあげるのは種を蒔いてから三日後がいい。


 種蒔きは、それぞれの野菜に適した時期にしなければならない(人はすでにそれを太陰暦によって知っている)。遅れて蒔くよりは、水なしで、本来の時期より早めに蒔くほうがまだいい。


 種から生まれた新芽の隣に雑草が生えていても、すべて除去してはいけない。少なくとも各種類ひとつずつは残すこと。その雑草は抜かないで切ればいい」


 アナスタシアによれば、種はこうして蒔く人に関する情報を取りこみ、実を実らせていくまでに、宇宙と地球から、その人にとって必要不可欠なエネルギーを可能な限り最大限に吸いこむという。


 雑草にもそれぞれの役割があるのだから、やたらに除去してはいけない。ある雑草は植物を病気から守り、またある雑草は、その植物に補足的な情報を提供することもあるという。


 植物が育っていく間、種を蒔いた人とのコミュニケーションは不可欠で、その期間に最低一度は、できれば満月の夜、その植物に触れてあげることが大切なのだそうだ。


 アナスタシアが言うには、このようにして育った果物や野菜などの植物の実は、それを蒔き、育てた人が食べると、まちがいなくその人のあらゆる病を癒すばかりか、老化のスピードを緩慢にし、悪習を取り除き、さまざまな知的能力を増大させ、心の平安までもたらすのだそうだ。


 また、今までに述べた一連の作業は、庭に植えられる作物の種類ごとに行なわなければならないが、キュウリ畑やトマト畑などのように、ひとつの作物がたくさん栽培されている畑では、すべての種について、先に述べた手順を踏む必要はなく、そのうちのいくつかにたいして行なえば十分なのだそうだ。


 このような方法で育った植物の実は、他の方法で栽培されたものとは、味だけでなくさまざまな面で異なっている。分析すれば、その実が含む物質の成分比率も異なっているはずだという。


 苗木をシャベルで掘ったくぼみに植えるときは必ず、素手で、そして裸足で行なうこと、手の指と足の指で土を整え、そこにつばを吐きかけること、とアナスタシアが言うので、私が「なぜ足なんだ?」と聞くと、彼女は、体の病に関する情報を含んだ物質(おそらく毒素と思われる)は足から汗として流れでるからだと答えた。苗木はこの情報を取りこみ、それを実に運び、実はその病と闘う力を蓄える。だから庭をときどき裸足で歩くといい、と彼女は付け加えた。


 「どんな作物を栽培したらいいんだい?」と私がたずねると、「たいていの庭にあるようなもので十分。ラズベリースグリグーズベリー、キュウリ、トマト、イチゴ、そしてリンゴ。甘酸っぱいサクランボや花を植えるのもいい。それぞれの種類ごとの数の大小や、植える区画の広い狭いはまったく関係ない」と彼女は答えた。


「最大限のエネルギーに満ちた微気候を自分の庭に生み出すことが大切。そうするために欠かせないのは、ヒマワリ(少なくともひとつ)のような植物。それと、1.5メートルか2メートル四方ぐらいをとって、そこに穀物(たとえば、ライ麦や小麦)を植えること。


 それから、はじめから庭に生えていた種々さまざまなハーブを、最小で2メートル四方、島のように残さないといけない。この島は、人工的に種を蒔いてつくるのではなく、自然のままがいい。庭にそういうハーブが残っていない場合は、森からハーブの生えている土ごともってきて、その島をつくらないといけない」


 すぐ近くに、たとえば庭を区切るフェンスの向こう側などに、いろいろなハーブが生えていても、庭の中に島をつくらないといけないのかという私の問いに答えて、彼女は言った。


 「大事なのは、植物の種類の多様性だけでなく、それがどのように植えられているかということ。自分で植えて育てて、植物と直接コミュニケーションをとることによって、その人の情報がその場に充満していく。


 植物の植え方について、大事な点についてはもう話したわ。大切なのは、あなたを取り囲む自然の一部を、あなたに関する情報で満たすこと。そうして初めて、あなただけに有効な癒しと命のサポート効果が、植物の実だけから得られるものよりさらに飛躍的に高くなる。あなたがたがワイルド、野生と呼ぶ自然・・・本当はワイルドじゃなくて、ただなじみが薄いだけ・・・の中には、あらゆる病を完璧に治す多くの植物が存在している。それが、これらの植物が創られた理由。だけど、人間は、それを判断する能力をほとんど失ってしまった」


 われわれの世界には癒しのハーブを販売している専門の薬局や、ハーブで病を癒す医者やヒーラーといった専門家もたくさんいると言うと、アナスタシアは言った。


 「いちばんの医者はあなた自身の身体よ。身体は最初から、あなたがどのハーブをいつ使うべきかを、食べたり呼吸したりする方法を知っているのと同じようによく知っている。


 身体は本来、病気が現れる前に、未然に防ぐ能力をもっている。そして、誰もあなたの身体を別のものと取りかえることはできない。なぜなら身体は、名医である神があなただけに与えたものだから。私は、身体があなたにとって益となる働きをするためにはどうすべきかについて話しているだけ。


 あなたと庭の植物との間にゆるぎない関係が確立されたら、植物たちがあなたの病を治し、面倒を見てくれる。彼らはあなたの健康状態について的確な診断をし、最も効果的な、あなた専用の特別な薬を作ってくれる」
(p128−131)



 こういう文章を読んで、「ほんまかいな? うそやろ!」と思うか、「へえ! 早速、やってみよう!」と思うか? おそらく前者の方がまともだと思うんですが、私的には、「シベリアの美女」と聞くだけで、「よっしゃあ!」みたいな感じ。「美女」と言いながら、実はメグレさんが「熟女」好きな人で、実際のアナスタシアさんは我々の想像とはかけ離れた存在だという可能性もあるのですが・・・基本、私も騙されやすいのかもしれません。


 ただ、日本で実際にこれを実行に移そうとすると、いくつかの問題に直面してしまいます。まず、市販の種のほとんどが農薬で種子消毒してあるので、命がけの行為になってしまいます(まあ、大丈夫でしょうが)。種子消毒をしていない種を手に入れるか、あるいは自分で自家採種するのが一番、確実ということになります。


 あと、人目がある時間帯に、素足で畑をうろついたり、「ペッ、ペッ」と畑の土に唾を吐きかけたり、両手を空に向かって差し伸べたりしていたら、どう考えても近所の人たちから「変人?」と思われてしまうので、台風とか雷雨で外出している人が居ない時や、丑三つ刻、夜明け前などの時間を見計らって、実行に移す必要があります。その点、周囲に人家がない畑だと、気が楽かもしれません。


 さらに、水やりの問題があって、実はペレランドラ農園のミシェルさんも、水やりは播種や苗の定植のときだけで、あとは潅水しないと言っているのですが、どうも日本の気候、特に夏の高温乾燥時には、水やりなしで根付かせるのは至難の業だったりします。ポリマルチを張っていれば、何とかならないこともないのですが、「ポリマルチはダメ!」と妖精さんに言われるとお手上げです。なので、そこは無理せずに、植物の育ち具合や天候を見ながら、臨機応変にやっていく必要があります。


 それで、一番の問題は、「私専用に育てた野菜さんたちを、他の人たちに食べさせても大丈夫なのだろうか?」みたいなこと。まあ、問題は出ないと思うのだけれど、アナスタシアさんのやり方に従うなら、一人ひとりが自分専用の畑を持たないとダメ? ということになってしまいます。いや、種まきや苗の定植のときだけ、本人に情報入力をしてもらって、あとの作業は他の人に委託する・・・ことも可能だとは思いますが、そこまでやるのはなかなか大変かもしれません。


 まあ、色々な問題はあるのですが、自分の手で耕すことのできる土地があるのなら、アナスタシア方式で、その土地や自然を「あなた色」で染めてみるのも面白いでしょう。「地域再生」と言うときには、その地域の風土や自然のなかに、もう一度、そこで暮らす人たちの情報を満たしていくこと、そのことによって土地や自然との深いつながりをもう一度、確立しなおすことが必要かもしれません。というか、人間には実はそういった自然との「共創作業」を行なう能力が備わっているということを、もう一度、思い出すことが大事なのでしょう。


 自分の庭、自分の菜園を作り、そのなかで植物との関わりを深めていくというプロセスは、心理療法の「箱庭療法」を目に見える形でやっていくようなものかもしれません。しかも、ただ庭を造るだけでなく、そこにある植物の生成消滅のプロセスに心を合わせて、植物を通して天体からの情報を受け取っていくという意味では、心を整理して癒していくだけに留まらず、自分の心の可能性を深め広げていき、自然や宇宙との親密な関係をもう一度取り戻していくことにつながっていくかもしれません。


アナスタシア (響きわたるシベリア杉 シリーズ1)

アナスタシア (響きわたるシベリア杉 シリーズ1)


妖精さんの独り言 4−2

植物とのグロッキング


 私の友人は植物にグロッキングする。彼女はインドの導師たちがするように、一日にして植物を開花させ実を結ばせたいと思っている。そのゴールを達成する日がはたして来るのか私にはわからないが、彼女はすでに園芸の達人ではある。彼女がカボチャの種をまいた二日後には苗が十センチまで伸びて大きな葉をつけていた。


 植物にグロッキングして「植物であること」「植物のニーズ」などが分かれば、その知識を生かして世話をすることができる。庭の植木にグロッキングしてのどが渇いているのを感じたら、水のあるところまで根を伸ばす、人間に戻って水をやる、水のスピリットを呼んで助けを求める、などができる。ほかにも葉をよく繁らせて太陽を浴びるとか、幹を太くして体のすみずみまで生気を行きわたらせるとか、新芽を出して成長する、などのニーズがあるかもしれない。有害物質による汚染はもちろん、変化がありすぎるのもなさすぎるのも、植物にとってはストレスだ。ストレスは病気を呼ぶ。植物の場合は害虫や病原菌がつきやすくなる。だからグロッキングしてリラックスさせてやろう。ストレスが低いときにはもっと成長させてやろう。そのためには植物を興奮させるのがいい。ワクワクするとエネルギーが高まり、その植物本来のパターンや学習したパターンが活発に働く。「ワクワク」の法則は「シャーマンの七つの原則」を実践しているときにもあてはまる。ワクワクしながら実践したほうが効果は高い。


 植物が人間の思考や感情に影響されるという事実は科学者も報告している。成長を褒めてやると植物はさらによく育ち、けなすとあまり育たない。そして正しく同調すればあなたに奇跡を見せてくれる。ほかの人間が知らないような秘密も見せてくれる。ルーサー・バーバンクとジョージ・ワシントンカーバーはそんな奇跡や秘密を見た人間たちだ。


 バーバンクは自然から学んで千以上の新種植物を生み出した。ジャイアント・デイジー、ジャガイモの改良種、ネクタリン、刺のないサボテン、早生の材木用樹木などは彼の成果である。1906年、サンフランシスコに大地震があった。バーバンクの住むサンタ・ローザの町ではほとんどの建物がペシャンコになった。しかし彼の温室はまったく被害を受けなかった。それは自分が自然と調和した関係にあったからだろうとバーバンクは言っている。それまでも植物には愛情を込めて話しかけていたが、地震の一件から、バーバンクは自分と植物の関係がただの「勘」以上のものであるのを確信した。彼が独自の方法でグロッキングしていたのは間違いない。植物(苗木であれ成木であれ)をひと目見ただけで、それがうまく成長するかどうか彼には選別できた。いっしょに見回っていた農業指導員には、どれだけ目を近づけてもその違いがわからなかったそうだ。「新種果実と生花の生産法」と題する講演で、彼はつぎのように語っている。


 心をすませ、謙虚な気持ちになって、母なる自然が私たちに教えているレッスンに耳を傾けてください。「神秘」のベールに光をあてれば、みなさんにも聴こえてくるでしょう。受け入れる態度がある者にだけ、自然は真実を運んでくれるのです。


 ジョージ・ワシントンカーバーは植物、おもにピーナッツとサツマイモの研究で知られている。彼は科学的な研究、分析、実験という手段ではなく、深いコミュニケーションから経済効率の高い数百の新種を生み出した。どうやってこんな奇跡を行ったのかという質問に、彼は「すべての植物と生命は私に話しかける。私の知識は彼らを愛し、よく観察して学んだものだ」と答えている。実際、カーバーの研究室には一冊の書物もなかった。その研究室で彼は植物と何時間でも話していた。彼が死ぬ少しまえに、「花に触れるとき、私は『永遠』に触れている。私は花を通して『永遠』と対話する。その声はかすかだけれど、かすかな声が妖精を目覚めさせる」という言葉を残している。


植物をグロッキングする実習


 あなたの家の近くに生えている植物にグロッキングして、彼らがどう考え、感じ、生きているのかを学ぼう。植物の種か苗を植えて、それが成長する間ずっとグロッキングを続けてみるとおもしろい。グロッキングするときには、「早く大きく育ってほしい」という気持ちも伝えよう。病気や害虫で弱っている植物やブラジルの熱帯雨林など、助けが必要と思われる植物にグロッキングして癒そう。


 植物にグロッキングすると「生と死、光と闇、成長と再生」の循環や「太陽暦太陰暦」「エネルギーの使い方」「変容」についても学べるだろう。薬草や治療に使われる植物にグロッキングして、そのヒーリング効果を学ぶのもいい。
(p.197−200)



 科学が発達し、科学が一つの宗教のようになってしまったことの弊害の一つは、「客観的な観察」「客観的な実験」のみが、対象を(科学的に)認識するための、唯一の手段である・・・と思われるようになり、それ以外の認識方法、物事を知るための手段が、無視されたり軽視されたりするようになったことでしょう。


 目の前の相手と一つになる、目の前の相手の中にイメージを通して入り込む・・・ことによって、相手のことを知り、さらには相手の目から見た自分を知る・・・ことも可能なのです。近代科学以前には、こうした「主観的な認識法」によって世界を理解し、他者を理解し、自分を理解する人が沢山いました。どちらが正しくて、どちらが間違っているという話ではなくて、両方の見方を通して、現実をより深く、正確に認識できるようになるということです。


 ちなみに、催眠療法の神様? ミルトン・エリクソンの技法には「ペーシング」というテクニックがあります。相手の呼吸にペースを合わせることによって、まず、相手に同調します。そして、今度は自分の呼吸のペースを変化させることによって、相手の呼吸を変化させて、その変化によって相手の心理的な状態を変化させて、催眠にかけてしまう・・・というものです。「息を合わせる」だけで、混乱状態の相手を落ち着かせてしまう・・・これも、「グロッキング」の技法だと言えるでしょう。


 こうした技法は、もしかするとキングさんが例示しているような「水」「石」「火」「風」「植物」「動物」「人間」だけでなく、「土地」や「地域」、「商店」「施設」などに対しても使えるかもしれません。あるいは、役割分担をして「ロールプレイング」を行なうことで、グループ全体として「地域」を演じてみるというのも、面白いかもしれません。


 ただしポイントになるのは、地域における「問題」を主観的にイメージや体感として理解するだけでなく、そこから「ペース」を変えて、地域における「解決」や「創造」も演じてみることによって、それらもイメージや体感として理解してみる、ということだと思います。そうすることによって、実際の地域に「解決」や「創造」をもたらすことができる・・・というのが、「シャーマニズム」の極意の一つだと言えるでしょう。


 今日は、畑で葉っぱにとまっているキイロスズメバチさんと目が合って・・・じっと見ていたら、向こうも真正面からこちらを見ている。10分間くらい見つめ合っていましたが、向こうからは私はどう見えているのか? キイロスズメバチさんの身になって、お尻を動かしてみたり、触角を動かしてみたり。それにしても、瞬きもせずに複眼でじーっと見られていると、その向こうにいるキイロスズメバチ一族全体から覗き込まれているような気がします。



アーバン・シャーマン

アーバン・シャーマン

妖精さんの独り言 4−1

 今日は秋分。コークリエイティブ・ガーデニングのミシェルさんの話しでは、畑の「新年」は「秋分の日」なのだとか?! まあ、雲風農園の妖精さんからも、なぜか「21日に大根や蕪の種を播け!」という指令が出ていますが、深い意味でもエネルギーが切り替わる日なのでしょう。

 さて今回は、「独り言」というよりは、妖精さんの読書ノートみたいな感じです。農業関連あるいは妖精関連の怪しい本? から、怪しい話を引っ張ってきて、紹介してみようという試みです。まあ、「怪しい」とは言っても、現代の常識、科学のドグマから見れば「怪しい」というだけで、一昔前は当たり前だったり、先住民族の文化においては当たり前だったりするものなんですが。


1.『アーバン・シャーマン』(サージ・カヒリ・キング著)


 最初に紹介するのは、ハワイのシャーマン(呪術師)、サージ・カヒリ・キングという方の著書『アーバン・シャーマン』(ヴォイス刊)から、「グロッキング」という技法についての文章を引きます。本のタイトルの意味は、要するに「アーバン=都市」で「シャーマン=呪術師」として生きるには、どうしたらいいのか? ということです。まあ「シャーマン」は「呪術師」と訳されることが多いのですが、人を呪ったりするのは「黒魔術師」で、もともとの「シャーマン」は、変成意識状態に入って、自然あるいは自然の精霊と会話して、病気を治したり、問題を解決したり、新しいものを創造したりする役割を果たしてきました。


 その「シャーマン」の基本的な技法が「グロッキング」ですが、これは日本語で言えば、「相手(対象)の身になる」ということになります。文字通り相手の「身」に入り込んで、相手を理解した上で、自分のあり方やパターンを変化させることによって、相手を変化させて、相手を助けたり、自分と相手の関係性を変えたりする・・・というテクニックです。「相手を変えようと思う前に、自分を変えよ」みたいな警句もありますが、その本質的な意味を指しているのかもしれません。
(以下引用)


グロッキング


 シャーマンの術を実用的に使うのが本書の目的だから、クリケ(ものまね)をヒーリングに利用する方法を教えよう。クリケには四つの段階がある。

1.コピーする  環境にあるパターンを意図せずして取り入れる。

2.模倣する   本人の安全と成長のために、環境にあるパターンを意図的に取り入れる。

3.役を演じる  人びとに影響を与えるため、環境と本人の意識内にあるパターンを意図的にとり入れる。

4.なる     本人が変わるため、環境と本人の意識内にあるパターンを意図的にとり入れる。神秘家たちが使うのはこれである。


 本書の目的からすれば、3と4の中間あたりを使えるようになりたい。「私は○○である」と思えるくらいまで「○○」のパターンをとり入れ、その自分がふるまいを変えることで○○の振る舞いも変わるくらい○○と共鳴したいのだ。しかし、意志の力でもとの姿に戻れるくらいは自分本来のパターンをどこかに記憶しておかねばならない。この微妙な段階を、私は「グロッキング」と呼んでいる。この言葉はロバート・ハインラインの著書「不思議の国の旅人」(Robert Heinlein “Stranger in a Strange Land”)よりの引用である。この本の主人公は「もの」のパターンと融合してそれを内面から理解し、意志の力でそれを内面から変える能力がある。


 グロッキングで大切なのは、グロッキングしている最中にも本来の姿と目的を忘れないことだ。「1パーセントを残すシャーマン」と覚えておこう。どれほど深くグロッキングしても、1パーセント(文字通りの1パーセントでなくともいい)の自己認識は残しておく。私たちがグロッキングする目的はヒーリングだ。あなたがいまにも枯れそうな木に百パーセントのグロッキングをしたとしよう。あなたは自分が枯れ木のように感じてヒーリングどころではなくなる。ちなみに、このような場合でもあなたが枯れ木に変身するわけではないので心配はいらない。何もできないうちにわれに返るか、眠り込んだあとで自然に目が覚める。「もの」のパターンを完全に変えるためには、意識レベルで働きかける高等技術が求められるが、この技術を習得した者は少ない。


 ではグロッキングの手順だ。

1 目を閉じる。

2 エネルギーを高める。

3 自分のスピリット・ボディ(霊体)に入る。

4 グロッキングする対象と融合する。

5 その場にふさわしい処置を考える。

6 自分のふるまいを変える。

7 グロッキングした対象から抜けて自分のスピリット・ボディに戻り、さらに肉体に戻る。


 目を閉じるのは気を散らさないためだ。慣れれば目を開けていてもグロッキングできる。エネルギーを高める方法としては、深呼吸しながら「愛の光」を感じるのもいい。ドリーム・ボディに入る要領でスピリット・ボディに入る。ただ、スピリット・ボディをイメージするときは純粋な光またはエネルギーで満ちた無限に広がる球体として思い描こう。肉体を超えて見えない体が広がっていると思えばいい。いつもながら、「見る」よりも「感じる」ほうが大切だ。融合するときは、あなたのスピリット・ボディが「それ」の霊的、精神的(思考的)、感情的、物理的(肉体的)なパターンとひとつになるのをイメージする。「それ」の感覚を感じることはここでも大切だ。
 
 「それ」へ、ある意味で「無条件の愛」を感じられればうまくグロッキングできる。批判的な態度があると融合しにくい。「それ」とあなたの間にみぞができるから、グロッキング度も低くなる。融合したあとは、あなたの感覚をチェックしながら、「それ」を変えることがふさわしいか判断する。「これを変えるのはふさわしくない」と感じても、それは怖れではない。うまくグロッキングできていれば、その場にふさわしいことが感覚としてわかる。自己認識を残しつつできるだけ融合したら、あなたが「それ」であるかのごとく、あなたのふるまいを変える。これはたいていイメージのなかで行なうが、人によってはグロッキングを保ちながら本人の肉体も使える。するべきことをしたら、「それ」から抜け出て自分のスピリット・ボディへ戻るイメージをして、さらに肉体に戻る。(前掲書 p.181−184)


妖精さんの独り言 3−6

妖精さんの読書案内◆

 前々回に引き続いて、農業関連の面白い本を紹介します・・・というか、農業関連以外の蔵書はほとんど処分してしまったので、紹介できません。前項に関しては「マインド・マッピング」から「学習する組織」まで、そのままのタイトルの本が出ているので、興味のある方はブックオフで探してみてください。ちなみに、『学習する組織』という本は、グループの発達段階にも触れていたかな?


 妖精さん農業の実践面で参考にしている本としては、まず、『家庭菜園の不耕起栽培 〜「根穴」構造と微生物を生かす』(水口文夫著 農文協)があります。昔から持っていた本なのですが、最近になって読み返した時に、「収穫後の残渣は、地上部を植木ばさみで切り刻んで、その場の有機物マルチにすればよい。根はそのまま地中で枯らせば、根穴構造を生かすことができる」と書いてあるのを発見して、「これだ!」と思って雲風農園に採り入れています。残渣を切り刻んだ後も、根菜類以外は深く耕す必要がないので、収穫が終わる前に、次作の苗の定植や播種を行うこともできて、一石三鳥くらいの御利益があります。

家庭菜園の不耕起栽培―「根穴」と微生物を生かす (コツのコツシリーズ)

家庭菜園の不耕起栽培―「根穴」と微生物を生かす (コツのコツシリーズ)


 次に、『青木流 野菜のシンプル栽培 〜ムダを省いて手取りが増える』(青木恒男著 農文協)ですが、この本は、経営計画や栽培計画を立てる上で、非常に参考になります。元は工場で働いておられて、その生産管理の技術を農業に生かして、徹底した合理化と効率化を図りつつ、輪作を生かして土壌条件を改善し、減肥料と減農薬でコストを大幅に下げながら、環境に優しく持続的な農業を行う・・・様々な工夫が紹介されていて、面白い本です。

青木流 野菜のシンプル栽培―ムダを省いて手取りが増える

青木流 野菜のシンプル栽培―ムダを省いて手取りが増える


 続いて、『絵で見る おいしい野菜の見分け方・育て方』(武田健著 農文協)は、「おいしい野菜」を育てるにはどうしたらいいか? というテーマで書かれた、唯一に近い本です。糖度計を使った汁液診断で、植物の生育状況を把握して、きめの細かい施肥・灌水管理を行なって、未然に病気や害虫を防いでいきながら、「美味しさ」を追求するという本です。

絵で見る おいしい野菜の見分け方・育て方

絵で見る おいしい野菜の見分け方・育て方


 『発酵肥料で健康菜園』(薄上秀男著 農文協)は、農薬で身体を壊した後、独自の食事療法で健康を取り戻し、その経験を農業にも応用して、発酵肥料(ぼかし)を使った栽培方法を確立された方の本です。特に目から鱗だったのは、四季の変化に応じて、自然界では、酵母菌→乳酸菌→納豆菌→乳酸菌→酵母菌→放線菌というふうに、優勢になる菌が遷移するという指摘でした。また、微量ミネラルの過不足が、植物の健康にも人間の健康にも影響を与えるという指摘にも、「なるほど」と思いました。

発酵肥料で健康菜園

発酵肥料で健康菜園


 このへんから、怪しい本の紹介に移りますが・・・『マリア・トゥーンの天体エネルギー栽培法』(マリア・トゥーン著 ホメオパシー出版)は、ルドルフ・シュタイナーの「バイオダイナミック農法」の実際について、分かりやすくまとめてある本です。と言うか、月星座に基づいた独特の栽培暦に沿って農作業を行うことで、宇宙エネルギーに満ちた野菜を作るという、野心的な内容です。

マリア・トゥーンの天体エネルギー栽培法 新装版 (ホメオパシー農業選書)

マリア・トゥーンの天体エネルギー栽培法 新装版 (ホメオパシー農業選書)


 そのシュタイナーの農業思想をまとめた本が、『農業講座』(ルドルフ・シュタイナー著 イザラ書房)です。シュタイナーは、日本では「シュタイナー教育」で有名な方ですが、教育や農業以外にも、経済、医学、社会学など、あらゆる分野についての講義や著作を残しています。彼の「バイオダイナミック農法」は、土壌や作物や家畜の霊的な次元に着目し、天体からのエネルギーの影響を考慮しながら栽培を進めていくという、独特の観点に立っています。

農業講座―農業を豊かにするための精神科学的な基礎

農業講座―農業を豊かにするための精神科学的な基礎


 最後に、ロシアはシベリアの妖精さん? 『アナスタシア』(ウラジミール・メグレ著 ナチュラルスピリット)ですが、こちらはシベリアのタイガの森に住む美女の話で、ところどころでロシアのダーチュニク(菜園家)への助言というかたちで、植物の栽培に関する面白いアイデアが語られています。また機会があれば、紹介してみることにしましょう。

アナスタシア (響きわたるシベリア杉 シリーズ1)

アナスタシア (響きわたるシベリア杉 シリーズ1)


妖精さんの独り言 3−5

◆農業のアナロジーから見た地域再生


 さて、こうした農業の営みを「ルート・メタファー(根元隠喩)」として、地域再生地域活性化というテーマについて「アナロジカル・シンキング(類推思考)」を行なってみましょう。実は、前回の講座でWさんに最後に尋ねた質問、「地域活性化で人集めをするのと、巣箱を置いて蜜蜂を集めるのには、共通点があるんじゃないですか?」という質問は、このアナロジー(類推)に基づくものでした。「蜜蜂でも、人集めでも、タイミングが大事!」という答えを頂きましたが、養蜂を勉強すると非常に含蓄がある言葉だったりします。というか、地域に桜を植えたり、菜の花を植えたりすれば、観光客だけじゃなくて、蜜蜂さんたちも集まってくるんですが・・・逆に、蜜蜂さんたちの蜜源が四季を通じて途切れないように、地域に訪花植物を植えてやれば、それに釣られて観光客も集まってくるんじゃないかな? みたいな気もします。そうなると「蜜蜂の多い地域は、観光客も多い」みたいな仮説が成立する可能性も出てきますが・・・いやいや、それはちょっと無理があるかもしれません。実際に蜜蜂を増やしみて、実証的なデータをとってみる必要があるでしょう。


 さて、地域起こしや地域活性化においても、前述した農作業のプロセスにあたるものがあるのではないでしょうか? 例えば、耕作放棄地の場合には、まず、開墾作業から始まります。いや、その前に耕作放棄地を探して、その土壌条件や植生、さらには農道や水路、日照条件、持ち主の評判などの現状を調査して、その上で持ち主と交渉して耕作放棄地を借り受けるという手続きも必要かもしれません。その上で、樹木や竹を伐り払い、根っこを掘り起こして、草刈りをして、ゴミや石などを廃棄して、更地にしないと始まりません。その後、ソルゴーなどの緑肥を一面に植えて、土壌の物理性と生物性の改善を図ります。緑肥を刈り倒して、土壌改良剤を撒いて、トラクターで鋤き込んだら、やっと作物の作付けの準備が整います。地域起こしや地域活性化のプロセスで、こうした開墾・土作りにあたるのは、どんな作業でしょうか? 地域内での根回し、行政との連携、地域の意識向上のための勉強会みたいなことでしょうか? 今回の「地元学」も、こうした作業の一環として位置づけられるかもしれません。


 土作りが済んだら、元肥を入れて、耕転・畝立てをして、播種あるいは定植をします。準備的な勉強会で「苗=人材」を育てておいて定植するという方法もありますし、とりあえず、沢山の「種=企画」をぶちあげて、播種して芽が出てから間引きする・・・という方法もあります。しかし、どちらにしても播種や定植をする前に、長期的な見通しの中で、どんな「収穫物=目標」を達成するのかを考えておかなければならないし、長年、その地域を支えてくれるような果樹の苗を植えるなら、結実するようなるまでの数年間を、どう支えていくかも考えないといけないでしょう。また、収穫した後の次作として、連作を避けてどんな作物(プロジェクト)を植えるのかを考えておいてもいいでしょう。そして、作物の初期生育を支えられるだけの元肥=予算・補助金を確保する必要もあるかもしれません。まあ、その点、自然農法だと無肥料で栽培することが多いので、予算は要らないかもしれませんが、その分、土作りにはお金をかけなければならないでしょう。


 発芽直後、定植直後というのは、ネキリムシにポキンと折られたり、苗立ち枯れで全滅したり、大雨にやられて腐ったり、逆に乾燥で枯れてしまったりということが、よくあります。だから、多めに播種したり、補植用の苗を用意しておいたりするんですが、慣行農法的には、初期防除というのが非常に重要になります。何しろこの時期は、作物の生育状況から目が離せない時期で、少しの異変も見落とさずに早め早めに手を打って、それでもダメなら早目に見切りをつけて、次の種をまいたり、補植したりしなければなりません。地域活性化でも、プロジェクトが軌道に乗るまでは、色々と大変なことが多いでしょうが、手を抜くことはできません。ある意味、2度3度の失敗は前提にして、芽が大きくなるまで、苗がしっかり根付くまで、根気よくイベントを開催し続ける・・・「3割ヒッターを目指す」ような姿勢も必要かもしれません。


 ある程度、苗が大きくなったら、余程のことがない限り、順調に育っていきます。「栄養生長期」という言い方をしますが、光合成を行うための葉っぱを増やして、大きくする時期で、光合成で炭水化物を合成し(一次同化)、その炭水化物と窒素(N)からたんぱく質を合成して(二次同化)、葉や茎、根などの植物体を構成します。地域起こしや地域再生のための事業やグループの基礎固めの時期と言えるかもしれませんが、地道な活動を通して、グループのメンバーのスキルアップを図ったり、他の地域や団体との交流を図ったりするのが大事かもしれません。何しろ、目立った成果や収穫はありませんが、この時期に、思いっきり植物体を大きくして、同化器官である葉を増やし、地中の栄養や水を吸い上げて、植物体を支える根を張らせて(根性をつけて)やることが、この後の収穫に直接、響いてきます。


 葉が茂って、植物体が大きくなってくると、植物体を維持するために必要なエネルギーと、植物体を作るために必要なエネルギーをまかなっても、さらに光合成で生産される炭水化物が余るようになります。そうなると、植物は栄養成長期から生殖成長期へ交代する時期にかかります。つまり、花芽が分化して、花をつけて、実をつけ始めるのですが、ここでまさに生育ステージが「交代」して、植物は質的に変化を遂げることになります。この変化の時期、クラッチを踏んでギアが変わる時期というのは、必要とする栄養がチッソ(N)からリン(P)やカリ(K)に変わったり、あるいは大根や人参のとう立ちのように形態が変わったりするので、植物が生育バランスを崩しやすい時期であり、病害虫の出やすい時期でもあるので、防除のタイミングを見計らう必要があります。また、花を咲かせて、受粉し、結実するときには、肥料分だけでなく水分も要求することがあるので、追肥や灌水、場合によっては中耕や土寄せなどの作業をタイミング良く行う必要もあります。地域起こしや地域再生で言えば、大事に育てて内部固めをしてきたグループが、対外的にデビューを果たす時期と言えるかもしれません。脚光を浴び始めると、人や評価が集まり始めるだけでなく、悪い虫? も飛んでくるかもしれないので、早め早めに防除? して手を打っていくのが大事でしょう。前もって、クレーマー対策や批判対策を打っておくのもいいでしょう。


 交代期を経て、生殖成長期に入ると、いよいよ収穫が始まります。水稲や枝豆のように、一度に全部、刈り取ってしまう品種もあれば、トマトやナス、キュウリのように、ずっと取り続けていく品種もあります。あるいは、果樹などでは、数年間は栄養生長で、その後、何十年も収穫し続けるということもあります。単発のイベントの開催を目指してきたグループにとっては、イベントを成功裏に終わらせることが収穫かもしれません。ただ、稲や麦などは、晴れてくれないと収穫できなかったりします。最終的には天候に左右されるというのは、一緒かもしれません。トマトやナス、キュウリなどの果菜では、一回の収穫ごとに追肥や灌水をして、成り疲れしないように気をつける必要があります。植物体は、果実をつけるのにかなりのエネルギーを使うので、生育バランスが崩れて病害虫にやられることも多くなります。何回かのシリーズでイベントを開催していく、果菜型のグループの場合には。一度の成功で安心しないで、状況に応じて細かい対応をして次につなげていくのが大事かもしれません。さらに、年に1度の大イベントを毎年開いていく・・・という果樹型のグループの場合は、果樹栽培に詳しいおじさんが沢山いますので、その方々に聞いてください。


 なお、収穫時には、B級品やハネものが沢山出ます。農業を実際に体験してみて、本当に実感したのは、お店に並んでいる野菜さんたちは、ものすごい競争と選別をくぐりぬけてきたエリートさんばかりなんだということ。まず、播種や育苗の時点で、発芽しなかったり生育不良になったりした株を落として、さらに間引きをして、品種によっては摘果をして、収穫時に商品になりそうにないものを処分して、さらに収穫してから規格に合わせて選別して、秀品は共販に出荷して、ちょっとでも傷があるものは直売所に出して、残ったものは自分たちのところで食べるか、廃棄する。このB級品、ハネものを加工して商品として得ることができたら、「もったいないお化け」が出ないで済むのになあ・・・と思うわけです。


 さて、収穫・選別・調製・出荷が終わったら、残渣の後片付けをして、次作のための準備をしなければなりません。この畑や田んぼを休める時期というのは、実は非常に大事で、保水性・排水性・保肥力を高める効果のある腐植質を多くするには、炭素比の高い有機物を畑に鋤き込んで、じっくりと微生物や土壌生物に分解してもらう必要があります。地域起こしや地域再生のプロジェクトにおいても、一段落したときには、それまでの活動をよく振り返って、軌道修正や人員の刷新、組織形態の変更などを行ってみてもいいでしょう。特に、メンバーの入れ替わりに応じて、仕事や人脈の引き継ぎを行う作業は、大事かもしれません。特に果樹型の活動の場合にはそうですが、御礼肥えをして、剪定をして、樹形を整えておかないと、次年度の収穫は覚束なくなります。果実を収穫した後に、盛んに光合成して、次の年に実をならせる分の栄養分を蓄えている場合もあるので、施肥や剪定のタイミングも非常に重要になります。


 まあ、農業をルートメタファーにして、アナロジカルに地域起こしや地域再生を捉えなおしてみると、以上のようになりましたが、別にこれが正解というわけではなくて、他にも無限の捉え方、考え方が出てくると思います。で、実は、読み返してみると非常に重要なポイントが抜けていることに気づいたりします。いったい何でしょうか?
 

 実は、作付けをする前に、いやこの場合なら耕作放棄地を手に入れる前に、作付け計画を立てなければなりません。つまり、「前もって、絵を描く」必要があるのです。ところが、作付け計画と立てるためには、そもそもの経営計画を立てなければなりません。そして、経営計画を立てるためには、どれくらいの利益をあげるかという経営目標を立てる必要があります。で、この経営計画や作付け計画がきちんと立っていないと、国からの補助金が下りませんし、残念ながら、行き当たりばったりや思いつきだけでは、農業で儲けることは不可能です。綿密かつ周到な計画を立てた上で、それを実行し、その結果を評価・反省して、改善して修正していく・・・PDCA(計画→実行→評価→改善)サイクルを回していくことが、農業においても、地域起こしや地域再生の活動においても基本と言えるでしょう。そのために、最初に挙げたような思考法や発想法、ディスカッション法をうまく使っていけるといいなあ・・・というか、このPDCAサイクルの全体をマネジメントできる人材を育てる・・・というのが、この講座の目的なのかしら?


 ちなみに、N先生の植物工場の講義の時に、「この講義と地域再生マネジメントはどう関連しているのですか?」と質問して、某Tさんから「また、先生に喧嘩売って!」とたしなめられましたが、ここで述べたような含意があるかどうかを確かめたかったというのが、質問の意図でした。すでに南予で稼働しているように、地域に植物工場を誘致することで、経済あるいは雇用の面で地域を活性化できる・・・という答えをいただきましたが、農業と地域再生を結び付けようと考える時に、そのことは非常に重要な方向性だと思うし、愛媛県地域活性化の切り札になる可能性も秘めていると思います。


 ただ、個人的には、農業全体と地域再生を結びつけて考えていくための、もっと大きな枠組みがあるんじゃないかなあ? と思ったりしています。つまり、地域再生の一手段として農業があるというだけでなくて、今回、試論として行ってみたように、農業のアナロジー地域再生のプロセスを見直してみることで、新しい「地域再生マネジメント」の方法論を生み出せないだろうか? みたいなことを考えているわけです。


◆おわりに◆

 最後に、皆さんに紹介しておきたいのは、大井上康さんが提唱した栄養週期理論の、植物の段階的発達モデルです。『家庭菜園の実際 〜栄養週期理論の作物づくり』(農文協 2006年)の口絵に掲げられている図表では、栄養生長期(消費生長期)→ 交代期 →生殖生長期(蓄積生長期)という三つの生長週期によって、植物の生長プロセスを捉えるという理論です。この図表では、まさに女性の成長プロセスをアナロジーとして引いていますが、教育の分野においても、こうした人間の発達段階理論というものが知られていて、その中でも特に、ピアジェの認知発達段階理論と、エリク・エリクソンの心理社会的発達段階理論(ライフサイクル理論)は、非常に良く知られています。


 発達段階理論というのは、例えば知識や知能が量的に連続的に発達するだけでなく、ある時期には、質的に異なる、非連続的な変化を遂げることがあり、教育の場面では、そうした発達段階の違いに応じて、発達課題が変化するので、教師や親と子どもの関わり方も変えていかなければならない・・・という考え方です。例えば、幼い子どもは知能が遅れているとか、頭が悪いというのではなく、幼児期独特の思考や論理を働かせていて、その時期にそれをきちんと訓練するから、次の認知発達段階に進むことができる・・・と捉えるのです。


 大井上さんの「栄養週期理論」でも、植物の発達段階に応じて、必要とする栄養が異なるので、発達段階に応じて追肥をしていくことで、逆に栄養生長から生殖生長への切り替えをある程度コントロールすることもできる。そうやってメリハリのついた生長ができるように育てれば、野菜も健康かつ強健に育って、安全で美味しいものが収穫できる・・・ということが述べられています。


 では、地域起こしや地域再生の活動やグループには、発達段階を想定できないものでしょうか?



家庭菜園の実際―栄養週期理論の作物づくり

家庭菜園の実際―栄養週期理論の作物づくり